2023年11月25日

外環ネット他計13団体が声明:陥没事故から3年、外環道工事中止、事業見直し、大深度法廃止を!

 2020年10月18日に東京外環道工事現場の真上の調布市の住宅街で陥没事故が発生してから3年目にあたり、外環ネット、東京外環道訴訟原告団・弁護団、他11団体(計13団体)は、外環道工事中止、事業見直し、大深度法廃止を求める声明を発表しました。
 なお、この声明は、国土交通大臣(*)、NEXCO東日本社長、NEXCO中日本社長、および東京都知事宛に送付します。(*)2023年11月22日に国土交通省道路局高速道課菅係長に手交。

以下は、その声明です。
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2023年11月22日

《声明》 陥没事故から3年 基本に立ち返って、住民の人格権・財産権を侵害する東京外環道の工事中止、事業見直し、大深度法廃止を訴えます!

外環ネット
東京外環道訴訟原告団・弁護団
ほか11団体

(1)陥没事故から3年
 2020年10月の陥没事故から3年。この間、2022年2月の裁判所の工事一部差止仮処分決定(他の区間の差止は2023年3月最高裁が特別抗告棄却)が出た時に、「仮処分を受けてどうするのか」という質問に、斎藤鉄夫国土交通大臣は「各方面と協議して適切に対応する」と答えたまま、現在に至るも「検討中」である。
しかし、この1年、陥没地域でまち壊しの地盤補修工事を開始した。
 また、差止区間(東名JCT北側本線トンネル工事)以外で、陥没原因調査や再発防止対策が不十分のまま、大泉JCT南側本線トンネル工事、中央JCTや東名JCTのランプトンネル掘削工事をなし崩し的に次々再開している。

(2)陥没地域では「まち壊し」が進む。地盤補修工事で新たな被害。入間川に気泡発生!
 陥没地域については、裁判所の決定を機に再検討を、と求めた被害住民の抗議を無視して、@停止を余儀なくされた掘削をどうするのか、A停止の原因者になっている請求人に対して、どう補償し、人権侵害をどう解消するのか、Bこの土地でトンネル建設を進めた結果、破壊されたまちをどう修復するかーといった基本的な問題には一切答えていない。
そればかりではなく、被害に付け込んで、差止の理由とされた当該の被害者を排除して、裁判所の決定を「無効」にしようとしている。

 事実、この1年間で陥没地域の住宅街は、巨大な工事現場と化した。約220m×16mの緩んだ地盤補修工事区域では、住民の追い出しが進み、約30戸の半数がすでに解体・更地化され、コミュニティは壊された。
8月に開始された工事は2年続く予定だ。
住宅が両岸に迫る入間川の上部約350mにパイプラインを設置し、セメント固化材を圧送し、排泥を戻す。
平穏な住宅街では、圧送ポンプなどの機械設備やパイプラインからの振動・騒音・低周波音などの新たな環境被害が発生している。
買取り対象区域外でも北行きルート直上は工事資材ヤードにするとの名目で買取られている一方で、トンネル掘削時の低周波音による健康被害者は、一時避難は認められても、買取を拒否され自費での転居を強いられている。

 11月2日、地盤補修箇所近傍の入間川に気泡が噴出していることが確認され、工事は中断された。
この工事は、高圧噴射攪拌工法によりセメント固化材と空気を超高圧で地中に吹き付けて地盤を崩し、直径4m高さ約40mの円柱を約220本作る作業である。
その影響が、対象の地下だけでなく、約20m離れた周辺の土地=入間川川底にまで及んでいることを示したものであり、補修範囲外の周辺の土地、地盤にも広がっていることを意味する。
新たな財産権侵害の不法行為である。
地盤補修方法を工法の見直しから根本的に再検討しなければならない。
今回、入間川の気泡発生を限られた住民のみに注意喚起したことは、広い範囲の住民の安全を軽視したものであり、危機感の欠如した措置である。

(3)気泡シールド工法は地表に酸欠空気を噴出。仙川への漏気前提の工事は許されない!
 地下工事により気泡が地表に上がってきたのは、初めてではない。2018年5月、気泡シールド工法を用いた東名JCT北側工事の掘削現場から世田谷区の野川に噴水のように気泡が噴出した。事業者は気泡の酸素濃度の値を隠蔽し続けていたが、ついに致死濃度の約6%であることを公表した。
酸欠事故を危惧する住民の要望に応じて居宅の酸欠調査を行う一方で、その後も、大泉JCT南側工事の白子川、また、調布市・狛江市の野川でも「大気に比べて微量である」と酸欠気泡を発生させ続けた。陥没事故にも大量に注入した気泡が関与しており、気体を用いる工法は住宅地下では欠陥工法である。

 陥没事故を発生させた気泡シールド工法を、信ぴょう性の薄い原因調査と実効性のない再発防止対策を基に、工事差止仮処分区間以外で使用し続けることは大変危険である。
特に、中央JCT南側ランプシールドトンネル工事について、トンネルから5m上の仙川河床に掘進添加物や酸欠気泡が出る可能性を前提に工事をする、と事業者は10月の工事開始前のオープンハウスで公表した。環境汚染や住民の人格権を侵害する工事は許されない。

(4)「地上に影響ない」は虚構!人権侵害の外環道工事は中止、大深度法は廃止を!
 この事業は、地権者には一切了解を得ないで始めた、財産権無視・憲法違反の大深度地下工事である。私たちは実験用動物ではない。大深度地下法が誕生した当時、法案を検討した調査会報告では、地上への影響について言及され、国会審議でも「一層の研究」が必要とされていた。

にもかかわらず、国(当時の建設省)は、住民の了解を得ずに開発が可能である、という一点で法案成立を強行し、高架方式による計画を地下方式に変更した。国も東京都も十分な検討なしにこれを認可、承認し、「地上に影響が及ばない」との虚構の説明を、陥没事故発生により破綻するまで行ってきた。
そして、住民に理不尽な被害を与えている。
2023年10月に発覚した、野川サイクリング道路陥没を、狛江市に報告せずに修復した事業者の「隠蔽」体質も、住民無視の大深度法に依拠している。

 私たちは、2017年12月に国・都に対して承認・認可の無効確認と取消を求める「東京外環道訴訟」を提訴した。それ以来、土地所有権の原則を壊す憲法違反の大深度法の廃止及び「費用対便益」の経済性も失われ、人口減少社会への展望をも欠いた東京外環道事業の中止を求めてきた。また、大深度法で守られた工事の杜撰さや説明責任放棄、さらに住民の人格権侵害を指摘してきた。

国とNEXCO2社は、「いったん決めたことは動かさない」という、頑迷な官僚主義によって、次々と新たな問題を起こしながら、その説明責任を果たすことなく事業を強行し続けている。
この先の「世界最大級の難工事」を自認する地中拡幅部の工事を、事業者が行えるとは到底見えない。
 陥没事故から3年を経た今、私たちは、既に公共事業として破綻している、財産権・人格権侵害の東京外環道の全面的工事中止と、事業見直し、大深度法廃止を求めます。
以上
                                   

賛同団体
・とめよう「外環の2」ねりまの会
・元関町一丁目町会外環対策委員会
・外環道検討委員会・杉並
・外環を考える武蔵野市民の会
・市民による外環道路問題連絡会・三鷹
・外環道路予定地・住民の会
・調布・外環沿線住民の会
・野川べりの会
・外環いらない!世田谷の会
・東名JCT近隣住民の会
・東京外環道訴訟を支える会

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2023年11月24日

「調布市での高圧噴射攪拌工法による地盤補修工事の中止を求める緊急要請」を外環ネットが国交省に行う

 2023年11月2日、NEXCO東日本は、「入間川における気泡について(第1報)」を地盤補修工事近傍の入間川(いりまがわ)に気泡が発生していることを東京外環プロジェクトのHPに公表しました。
 なお、11月21日、NEXCO東日本は、「入間川における気泡について(第2報)」を公表しました。

 外環ネットは11月22日、この件に関して外環陥没地盤補修工事周辺住民の安全・安心のために、国土交通省を訪問し、道路局高速道路課の菅係長に国土交通大臣宛の緊急要請書「調布市での高圧噴射攪拌工法による地盤補修工事の中止を求める緊急要請」書を手交しました。
 また、NEXCO東日本及び中日本並びに地元自治体に送付しました。

 この件に関して、「謎の気泡が近くの川から…調布の外環道、地盤補修工事を中断 東日本高速は原因を明言せず」
東京新聞2023年11月6日
、朝日新聞、NHKなどのメデイアが報道しています。

 以下はその要請書です。
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2023年11月22日

国土交通大臣 斉藤 鉄夫様
東日本高速道路株式会社代表取締役社長 由木 文彦様
中日本高速道路株式会社代表取締役社長CEO 小室 俊二様
[写] 調布市長 長友 貴樹様
[写] 三鷹市長 河村 孝様

外環ネット

調布市での高圧噴射攪拌工法による地盤補修工事の中止を求める緊急要請

調布市東つつじヶ丘での外環陥没事故の地盤補修区域に隣接する入間川での気泡発生について、東京外環プロジェクト・ホームページ上でNEXCO 東日本は、「11月2日の改良体 造成作業中に……入間川において気泡が発生していることを確認しました。造成作業終了後には気泡の発生が止まっていることを確認しています。今後調査を実施し周辺環境への影響を確認してまいります」と記載しています。

事態は極めて深刻です。
第一の問題は、今回の地盤補修工事によるセメントスラリー及び空気の注入の結果、想定された直径約4mの範囲を越えて、約20メートル離れた入間川から空気が噴出している事実が明らかになったことです。計画発表当初から、当該地域とその周辺住民および沿線各地で、空気の漏出を心配する声は上がっていました。それが現実になり、今回のエアを注入する高圧噴射攪拌工法では地盤補修区域(約220m×16m)内に影響をとどめることは不可能であることが証明されました。トンネル工事による地盤の緩みに加えて、補修工事による地盤破壊が更に生じているのです。新たな財産権の侵害、家屋被害が発生する可能性が極めて高いといえます。周辺住民の安全・安心は、奪われてしまいました。

第二に、地中からの気泡の発生は、2018年5月や2020年3月以降の野川で発生した気泡と同様、酸欠気泡である可能性が高く、そうであれば周辺住民の安心・安全に極めて深刻な影響を及ぼします。また、地中に滞留した工事による気泡が、長期にわたって周辺地盤を緩めていく可能性も大いに心配されます。

以上のことから、私たちは次の諸点を直ちに行うよう、要請します。  
1. 現在行われている高圧噴射攪拌工法による地盤補修工事を直ちに中止すること
2. 入間川に噴出した気泡の発生原因を明らかにすること
3. 地盤補修工事周辺の住宅地での地盤調査を直ちに行い、住民説明会を開催してその結果を公表すること
4. 上記地盤調査の範囲については、地元住民の要望に基づくこと
5. 補修工事区域外での地盤損傷(緩み、空洞など)については補償すること
6. 補修工事に当たっては、地元住民合意の上で、周辺環境に影響を及ぼさない工法を採用すること。但し、空気を注入する工法は採用しないこと。
 

なお仙川への漏気を前提とした工事計画に基づく中央JCT南側ランプ工事は論外であること(2023年10月27日付「東京外環道中央JCT南側ランプシールドトンネル工事の中止を求める緊急要請書」参照)を、敢てここに繰り返し指摘しておきます。

問合せ先:外環ネット


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