2020年10月18日に東京外環道工事現場の真上の調布市の住宅街で陥没事故が発生してから4年目にあたり、外環ネット、東京外環道訴訟を支える会、他12団体(計14団体)は、外環道工事中止を求める声明を発表しました。
なお、この声明は、国土交通大臣、NEXCO東日本社長、NEXCO中日本社長、および東京都知事宛に送付します。
以下は、その声明です。
-------------------------------------------------------
2024年10月18日
住民無視・人権蹂躙の東京外かく環状道路建設事業の中止を!
事故4周年にあたり、陥没事故の事業者の責任を改めて問う
外環ネット
東京外環道訴訟を支える会
他12団体
調布陥没事故から既に4年が経つ今、私たちは、改めて陥没事故について事業者が責任を果たし謝罪すること、住民無視・人権蹂躙の東京外環道事業の中止を求めます。2020年10月18日に東京外環道のトンネル工事により調布市東つつじヶ丘の住宅地に巨大陥没事故が発生。その後、巨大空洞も3つ、確認されました。1ヶ月ほど前から住民は振動・騒音・低周波音被害を訴えていましたが、事業者は工事を強行し陥没事故を起こしました。それから4年、被害地域修復どころかトンネル直上の地盤補修工事で街は完全に壊されています。
こんな計画がなければ、こんな事故がなければ、何事もなくただ静かに余生を送リ、あるいは子育てをしているはずだった住民たちも、「健康で文化的な生活」どころか「平穏に住み続ける生活権」を奪われ、心身の健康を蝕まれる状況が続いています。
被害地域では2022年末から緩んだ地盤補修工事のため、約50戸の移転、住宅解体・更地化が始まり、並行して2023年8月から本格工事が開始されました。しかし2025年5月撤収予定が、住宅移転も含め、いまだ30%も進捗していません。2023年11月には入間川に気泡が発生し、3か月工事中断。本年7月には市道、8月には再び入間川に気泡を発生させており、周辺地盤への影響は明白なのに、杜撰な酸素濃度測定をもとに工事を強行し続けています。
白い塀と防音幕、緑色の目隠しに囲まれた住宅地は、さながらコンビナートのようで、10bを超すクレーンや圧縮ポンプなどが発する不気味なうなり声と振動・騒音・低周波音が伝わる工事現場に変わり果てています。この地で何十年も生活し、子どもを育て、老いた父母を見送ってきた住民たちが、喜びも悲しみも生活も断ち切られ、悲しいやり場のない思いを抱えて引越しをせざるをえない状況に追い込まれています。一方で、補修区域外の住民は,騒音・振動・低周波音被害の中で、逃げ出すこともかなわず捨て置かれています。
2023年秋、野川沿いの遊歩道に起きた陥没を、外環事業者は管理者である狛江市に届けず、無断で補修しました。2024年春には、陥没地域の住民やマスコミらを監視・盗撮し、プライバシーを侵害していることが発覚しました。いずれも脱法的行為であるのに、まともな対応も謝罪もなく、住民に重ね重ねの我慢を強いたまま、地盤補修工事が進められているのが現実です。
2024年だけでも、トンネル工事による事故は、岐阜県瑞浪市でのリニアトンネル工事による地盤沈下と湧水枯渇被害、鹿児島県北薩トンネルでのトンネル壁面出水崩落事故、圏央道横浜環状南線桂台トンネル工事による地上での振動・騒音・低周波音健康被害、広島市西区雨水管シールドトンネル工事による道路陥没事故等と相次いでいます。
東京外環道工事においても、東名JCTの作業員死亡事故に始まり、野川・白子川での気泡噴出事故、大泉JCTでのシールドマシン自損事故、東名JCTでのシールドマシンテールシール破損事故などなど、調布陥没事故以外にも事故を繰り返しています。8月末の大雨時には東名JCTランプトンネル函体部脇の地表面陥没事故を起こし、土留壁崩壊を防ぐために函体部を水没させる応急対応が現在も続いています。
このような東京外環やリニアのトンネル工事でのいくつものトラブル・事故をも勘案すれば、地下開発の技術が「未完成」であることは明らかです。にもかかわらず、事業者はトンネル工事による周辺の自然環境破壊、住環境破壊に無頓着・無責任であり、監督すべき国交省や地域を守るべき自治体も無自覚です。この技術のなさへの無自覚こそが、この問題の根本にあります。
事故の度に、東京外環トンネル施工等検討委員会で「安全性が確認された」として工事を再開。しかし、「地下のことは掘ってみなければわからない」などと嘯く学者が座長である委員会による再発防止策には実効性がなく、事故は繰り返されています。
現在トンネル掘進中の本線トンネル大泉南工事、仙川下5mを通過する中央JCT南側ランプ工事、東名JCTランプ工事においても、いつ重大事故が起きても不思議ではありません。さらに、「世界最大級の難工事」である地中でトンネルを直径約35mにも広げる地中拡幅工事が外環沿線8か所で控えています。地上に影響が出ない保証はどこにもありません。
東京外環道計画は「重厚長大経済」時代の高架による高速道路計画で、1966年に都市計画決定され、住民の反対運動により凍結。石原都知事が「地下開発」として再浮上させました。「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法(大深度地下法)」が2000年に制定され、40b以深の地下を直径16bの世界最大級のシールドマシンで掘進する事業が認可されました。
大深度地下法は「所有権はこれまでのまま。使用権を認めるだけだ」と、ローマ法以来の土地所有権の原則も、憲法に定められた公共事業としての住民の承諾や補償も無視する法律です。「地上に影響は及ばない」との非科学的な触れ込みで、都市計画事業が承認・認可され、住宅街の地下を地権者に無断・無補償で掘り進む外環道の工事が始まりました。
しかし、十分な地盤調査を行わず、未熟な地盤調査評価技術や掘削技術を自覚せず、杜撰な掘進を強行した結果、陥没事故を起こし、安全神話は崩壊しています。陥没事故により、裁判所から、東名JCTから井の頭通りまでの約9km区間の気泡シールド工法による工事差止の仮処分が決定され、再開の見通しは全く立っていません。大深度地下法の「違憲性」は明らかです。
先の臨時国会では、大深度地下法の廃止法案が国会に議員提案されました。大規模地下開発による災害発生防止措置の強化検討をも含むものです。
今起きている問題は、国民の「平穏に暮らす」という当たり前で決して侵してはならない基本的人権、幸福追求権の問題です。私たち外環沿線住民は、既に起きている陥没事故について、事業者が全ての責任を引き受け謝罪・補償することを求めるとともに、国が問題を直視し、住民無視・人権蹂躙の東京外環道建設事業を中止し、大深度地下法を廃止することを、改めて求めます。
「憲法に基づく政治を」は、安全保障問題だけではありません。私たちは、人権と民主主義に基づき、国土開発政策の抜本的な見直しをも求めます。以上
賛同団体(順不同)計14団体
・外環ネット
・とめよう「外環の2」ねりまの会
・元関町一丁目町会外環対策委員会
・外環道検討委員会・杉並
・外環を考える武蔵野市民の会
・市民による外環道路問題連絡会・三鷹
・外環道路予定地・住民の会
・調布・外環沿線住民の会
・野川べりの会
・外環道検討委員会
・外環いらない!世田谷の会
・東名JCT近隣住民の会
・東京外環道訴訟原告団・弁護団
・東京外環道訴訟を支える会
連絡先: 外環ネット E-mail: info-gaikannet@gaikan.net
*****[お知らせ]*****● このブログについてのお問合先はinfo-gaikannet@gaikan.net まで
●
《新刊》『道路の現在と未来 ─道路全国連四十五年史』
道路住民運動全国連絡会編著 本体2600円 緑風出版
住民は道路事業にどう抵抗し 何を勝ち取ってきたか 道路はどうあるべきかを提言
●東京外環道の真実を伝える本を広めてください!
「住宅の真下に巨大トンネルはいらない〜ドキュメント東京外環道の真実〜」
丸山重威著 東京外環道訴訟を支える会編 本体1600円
推薦:浜 矩子(同志社大学教授) あけび書房
●東京外環道訴訟を支える会のブログはこちらから