2021年03月07日

事業者の姿勢と有識者委員会報告について私たちの見解

 外環ネット、東京外環道訴訟原告団・弁護団、他12団体は2月19日、「東京外環道の調布陥没・空洞調査報告(2021.2.12)と住民説明会(2021.2.14-15)についての声明」(別紙を含む)を公表し、「住宅街陥没!東京外環道路事業・工事の中止を求めます」署名の第1次提出行動において、赤羽一嘉国土交通大臣宛5,372筆、小池百合子東京都知事宛5,344筆の署名とあわせて、本声明を国土交通大臣および東京都知事に届けました。なお、NEXCO東日本社長及びNEXCO中日本社長宛に別途送付しました。

 以下は声明文に引用、添付されている(別紙)「事業者の姿勢と有識者委員会報告について私たちの見解」です。

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事業者の姿勢と有識者委員会報告について私たちの見解

【1】法律と民主主義からの提起

@ 工事の起因性と過失責任
今回の報告で、事業者は工事によってトンネル上部に空隙が生じ、即時に又は一定の時間をかけて順次天井が落ちて地表近くに及び、陥没や空洞を生じさせたことを認めました。

大深度地下使用認可は、人の土地の「大深度地下」に、一定の範囲で使用権を設定する行政処分です。使用権を設定する範囲は、上下左右とも添付された図面(縦断面図と平面図)によって特定されています。したがって、使用権を設定された範囲外の地下は、事業者は法的に使用権がありません。事業者は、これをどう考えるのでしょうか。

今回、トンネル上部から上の地中に影響を与えたことは、事業者が、無権限、無断で他人の所有する土地に踏み込んだことになり、それ自体が、他人の土地への違法な侵入行為です。そしてこのことは、認可条件違反にあたります。

事業者は今回の事態を「不可抗力」とか「想定外」と世論に訴えかけ、「仕方がなかったことだ」と印象づけようとしています。これはいずれも、正当化の理由にはなりません。そして、本件は「予見可能性」があったのであり、事業者は100%過失があります。

A 認可条件違反と取り消す「義務」
大深度法16条は「使用の認可の要件」として、以下のとおり規定しています。
第16条 国土交通大臣又は都道府県知事は、申請に係る事業が次に掲げる要件のすべてに該当するときは、使用の認可をすることができる。
1 事業が第4条各号に掲げるものであること。
2 事業が対象地域における大深度地下で施行されるものであること。(以下略)
さらに大深度法29条は、「使用の認可の取消し」として以下のとおり規定しています。
第29条 国土交通大臣又は都道府県知事は、認可事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、使用の認可(前条第 1 項の規定による承認を含む。以下この条において同じ。)を取り消すことができる。
1 この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反したとき。
2 施行する事業が第16条各号に掲げる要件のいずれかに該当しないこととなったとき。

今回の事態は、工事(使用)の範囲が、大深度地下以外の部分に及んでおり、形式的には、これにあたると言え、事業の「影響」が大深度地下以外の地中に及ぶような行為は、これに違反した行為です。国土交通大臣は、認可を取り消すことができます。

この「取り消すことができる」との規定は、「取消権限」があることを意味します。政府、事業者は、取り消すかどうかは、「国土交通大臣の裁量」と考えるのでしょうが、「取消の権限があり、取消事由がある」とき、国土交通大臣が取り消さないためには、それなりの理由が必要です。私たちは、建設の利益が既に失われ、住民の人権がこんなにも侵されている状況の下で、これを超えて取り消さない理由はないと考えます。国土交通省はこれを説明できるのでしょうか。

B 気泡材、掘削土量を把握できない能力不足
事業者は今回の問題が持っている法的問題をどう考えているのでしょうか。
今後の掘進については、地層がさまざま入り組んでおり、かつ水の層が幾重にもあります。地表には、いくつも池があり、川があります。特に川のある地域の地下を横断する箇所が何か所もあります。池や川の下には水を含んだ多様な地層があるのですから、シールドマシンによる掘進 は、これまでよりも難しくなることは明らかです。

今回明らかになったのは、人為的に注入する「気泡材」が土中にどれだけ入ったのか「浸入量」さえ把握できなかったことです。こうした「能力」が不足する工事担当者が、今後自然界に存在する、複雑で水も含む地層に対して、「掘削土」を正確に把握し、適切な掘削を行うことができるとは到底考えられません。今回の事故のメカニズムは、そのことを示していると思います。事業者はこの事実をどう考え、どう評価するのでしょうか。

C 何か起きたら「未必の故意」の「傷害罪」
言うまでもなく、今後工事を再開することは、人が多数居住している住宅地の地下を掘削することであり、現在の状況から言えば、「手探り」で、「実験をしながら…」、穴を掘ることです。今回、陥没が起きたとき、たまたま日曜日でその上に人が居なかっただけで、これは僥倖とも言うべきことでした。車が差し掛かっていたり、通学の子どもたちが連れ立って歩いていたら、と考えるとぞっとします。今回の工事は、その杜撰さも含めて人の財産、生命、身体に危害を与える危険性を有する行為であって、「人体実験」ということでさえあります。許されることではありません。このことについての真摯な反省は表明されないのでしょうか。

この状況のもとで、工事を再開して人の土地や建物に変状を及ぼせば、もはや「未必の故意」による「建造物損壊罪」、人身被害が生じれば「未必の故意」による「傷害罪」「傷害致死罪」と言えるのではないかと思います。または少なくと「業務上過失致死傷罪」にあたると言えます。事業者たちは、その認識をお持ちでしょうか。どう考えているのでしょうか。

D 法と道理を欠く事業の遂行
そもそも今回の事態を生じさせた、事業者の行為は、結果が発生するかどうかにかかわらず、「人の住宅の下に陥没や空洞を生じさせる危険性を有する行為」です。それ自体が、憲法上の「財 産権」「人格権(生命、身体、健康、精神)」を侵害する危険性を有する行為です。国土交通大臣 は、事業者として、かつ大深度地下使用を認可した者として、かつ都市計画事業承認をした者として、本件事業を停止すべき「責任」があると言わざるをえません。

今回の調査報告と事業者の説明には、こうした法と道理に基づいた説明が基本的に欠けています。調査、報告というならこうした問題に答える姿勢こそ求められているのではないでしょうか。


【2】事実認識と科学からの提起

1:有識者委員会の資格 ―有識者委員会の中立性の疑問
@ 有識者委員会の資格
事業者は今回、「陥没事故」の評価を「有識者委員会」に委ねたが、委員会の小泉淳委員長は、事業を推進する東京外環トンネル施工等検討委員会の委員長でもあり、この「事故」を起こした責任者の一人であることは、隠しようもない事実です。

事業者は、そのような「有識者委員会」を利用して、自己の責任を覆い隠しています。
求められるのは、事業者から独立した第三者委員会による調査分析であり、現在の有識者委員会にその資格はありません。

A 調査報告の問題点
今回発表された調査報告は、事故の内容を十分に究明しようという姿勢よりも、工事再開への世論づくりを狙ったものと言わざるを得ません。

調査に当たっては、なぜこの場所で、こういう形で何を調べるのか、その結果何がわかり何がわからなかったか、などが精査される必要があります。

また、調査報告は、振動騒音や住民の健康被害については全く触れていません
地下については、法律成立当初から、地盤の状況、地下水の問題、地震波の問題など、あらゆる問題について調査・研究が必要であり、慎重に進めるべきだといわれてきました。
私たちは今回の事故に対して、あくまで科学的で学問的な立場から、公正な調査が行われ、将来の検証にも耐える報告書が作られるべきだと考えます。

2:地盤調査について
@ ボーリング調査のありかた
調査報告は、陥没を中心にした地域に限定され、その地盤構造を解明することに終始していました。しかも、この調査は、陥没個所とトンネルを中心とした道路上に限定し、しかもその深さはトンネルの天端にまで届かない範囲のものでした。

事業者は、この際改めて、なぜ事前に不十分なボーリングしか行わなかったかについて明らかにすべきです。本来、地下を掘るには、ボーリングをはじめとする徹底した地質調査が、コース選定、工事方法の検討にあたっておこなわれなければならないはずです。

A ボーリング個所は適切だったか、それで何がわかったのか
今回の調査では、ボーリングについて、エリアを2つに分け、限定されたボーリングを実施し、そこで地層を推定し、議論を展開していますが、多くの点で疑問を持たざるをえません。

まず、「エリアA」については、事前のボーリングは 21-12 地点(この地点はトンネルから約 100mはずれている)だけとし、礫層(Hig層厚 4m)を掘削し始めた部分から設定してます。しかし、その礫層の下に存在する礫・砂互層(層厚5m)を無視しており、設定そのものに問題があります。

また、陥没地点を含む東つつじヶ丘の地盤は、武蔵野V面(中台面)で、ここから、武蔵野T・U面に向かって約15mトンネルが上昇するルートになっていますが、この垂直方向へのカーブの問題にはまったく触れていません。直径16mの巨大シールドマシンにとっては、カーブは「大敵」だと考えますが、説明がありません。

報告では「陥没地点は、人工的に掘削され埋め戻した場所で硬質のロームが存在していないから陥没した」と断定していますが、この付近の台地上では、上から、埋土・立川ローム・武蔵野Vローム(中台ローム)、武蔵野V礫層、東久留米層、の層序となっています。関東ローム層は、富士山などの火山灰が堆積したもので、この付近では1万年に約1m堆積しており、時代によって粘土質の多い層もあります。しかし、N値10以下程度の単なる土です。空洞の上のローム層と陥没地点のローム層はどう違っているのでしょうか。一方で陥没が起きている以上、空洞が陥没しない保証はありません。

報告は、「緩み」がトンネル切羽からその真上に拡大したとし、周辺部への広がりを否定していますが、果たしてそれでよいのでしょうか。「調査ボーリング(以下 No.)No.K地点から北側以外では空洞、緩みはない」と断定していますが、No.L地点付近ではガス漏れ、No.M地点のボー リングでは、武蔵野礫層(Mg層)直下で地層の緩みが確認されています。このメカニズムを解明すべきです。

3:「地盤の緩み」について
調査結果では、縦断方向について「ボーリング No.C地点〜No.H地点までの区間で、地盤の緩みは確認されました。No.C〜H地点以外では地盤の緩みは確認されていません」とし、一方、トンネルの横断方向では陥没個所の No.@地点でしか調査していません。また、トンネルから東側のボーリング No.E地点、西側の No.F地点では緩みがないことを確認したとし、「微動アレイ調査」で、空洞 1,空洞 2 地点で地盤が緩んでいる可能性を確認したとしています。

「地盤の緩み」は、当然、工事に起因するものですが、調査報告にはこれにどう対処するのか「対処方針」がありませんし、この状況の中で、調査した場所以外に同様の場所がある可能性について、一切触れていません。この周辺だけでなく、全線に渡って同様の調査をし、「空洞」の発見や「陥没」の危険性を確認し、対応すべきです。

また、No.I、No.J、No.KA 地点は、ボーリング調査で緩みは確認できませんが、事業者が緩んでいないとするトンネルの左右両端の部分で行われたものです。

4:「地盤沈下」について
「地盤沈下」については、「地表面最大沈下量 19 _で収束している」としています。しかし、この東西方向の最大沈下量を結んだ中心線はトンネルルートに平行しており、また、若葉町1丁目の沖積層の部分では沈下はほとんどみられていないとしています。

自然沈下がないはずの関東ローム層堆積地で沈下しているのは、明らかに工事の影響によるものですし、3カ月間での沈下量 19 _は、年換算では約 80 _にもなります。この沈下量は極めて大きいと考えます。これで「収束した」と断定できる根拠は一切示されていません。

さらに、昨年 12 月 18 日、日本経済新聞が報じた衛星観測による「地盤沈下」について事業者はどういう評価をされるのでしょうか。報道ではシールド機が通過した直後、その周辺で最大3aの地盤沈下が起きていることが明らかになった、とされています。必要な追跡調査をし、的確な対策が取られなければ、住民の安全・安心は確保されません。事業者にはそれを明らかにする責任があります。

地盤沈下に密接に関わるのは、言うまでもなく地下水です。地下水の流れは、陥没した礫層の下方にしみ込んでいる可能性もありますが、調査報告はこれに一切触れていません。

このほか、空洞 No.1 地点の土砂と入間川護岸の堆積土砂の成分の違いについて、その意味を説明するべきです。また、空洞No.3 地点の地下水から界面活性剤成分が検出されていますが、これは明らかに工事の影響です。気泡とともに上部に上昇したことが想定されますが、事業者側は関
連の可能性すら明言していません。

また、「エリアB」については、トンネル掘進部の礫層の存在で決めていますが、その下部の 砂・礫互層についてどう考えるのでしょうか。この地域では「最大沈下量6_で収束した」と断定していますが根拠はありません。この地域については、地下2bしか調べられない物理探査と微動アレイ探査の結果だけで地盤の緩みも空洞もないと断定しましたが、これで良いのでしょうか。調査ボーリングを行うべきです。

5:陥没、空洞はなぜできたか
調査報告は、陥没について「特殊な地盤条件である陥没箇所付近では夜間の作業休止後、カッターが回転不能になる事象が発生」し、これは8月以降16回におよんだとしています。その際、「地山の緩みが発生」、「掘進再開後も気泡材がこの地山の緩みに浸透し、このことに気がつかず過剰に土砂を取り込み、地山の緩みが拡大した」と推定しています。

しかし、問題はこの状況をすべて「特殊な地盤条件」のせいにし、こうした作業に当たって、地盤の点検、さらに土砂の取り込み、気泡材の量、作業手順等が妥当でなかったために起きた「作業ミス」であることを認めていないことです。事前にどのような調査を行ったのか、あるいは、なぜ行わなかったのか、明らかにすべきです。

さらに、調査報告は陥没を起こした地層について、「特殊な地盤条件にある」としていますが、均質な砂層である東久留米層は、関東地方に広く広がる上総層で、トンネル掘削時に陥没事故を何度も起こしている地層でもあります。それを知らなかったとすれば、素人が勝手に地面を掘っているということになるでしょう。事故を起こしたことを糊塗するために「特殊」と主張していますが、特殊でも何でもない地層です。あえていえば、「特殊だから」事故が起きたのなら、この事業者にはトンネル工事をやる資格も、技術もないこととなります。

また、問題なのは、この地域では、事前にボーリングをした資料がほとんどないことで、東久留米層内の礫層(Hig)、まして、地質断面に記載されていない礫・砂互層について、どこから始まっているかは把握されていないことです。調査報告が、事故の直接原因としている礫層についての調査が不足していたことについて言及がありません。これこそ責任をごまかすための操作としか考えられません。

しかも調査報告は「表層部が薄い」としていますが、これも当たり前のことで、意味のない指摘です。武蔵野V面は、武蔵野T面・U面に比べ、ローム層・礫層が薄いのは当然ですが、立川面よりは厚いことも知られています。またこの「特殊な区域」は京王線までとしていますが、これもきちんと「旧甲州街道付近まで」と言うべきです。

6:影響はトンネル直上だけなのか
陥没・空洞は、地山の砂・礫がマシンによって取り込まれていった結果生じたもので、陥没・空洞の部分だけが、トンネル方向に局所的に引き込まれていることになりますが、なぜここだけ取り込まれたのか、トンネル上部だけでなく、周辺の横断方向(東西方向)のデータは陥没・第2 空洞以外ほとんど示されていません。このため、地盤の緩みの立体構造は見えてこず、周辺がどんな危険な状態になっているのかわかりません。トンネル上部だけの補修で済まそうとの発想からの未検討なのでしょうか。「緩んでいるのは陥没・空洞部分の直下だけ」と言いたいのでしょうか、不思議です。また、ボーリング No.C地点の上方のN値データを示さず、緩みはないとしているのはなぜでしょうか。


7:再発防止に向けての姿勢
調査報告は、地盤の緩みの範囲をことさら特定し、2639 リング〜2840 リングの間、ボーリングNo.C、G−A、No.@、D、D−A、Hの間などについて、トンネル直上の緩みの可能性を指摘し、No.Kより南側では問題はないとし、北側を緩みの可能性のある範囲として「地盤補修予定範囲」としています。一方、「引き続き調査し、補修地域を決定」するとしていますが、どんな調査を行うのでしょうか。住民の不安を取り除くためにもできる限り広く調査すべきです。

また、「エリア B」では地盤の緩みはなく、「今後常時監視し変動が生じたら対応する」「基本的には調査をしない」という姿勢です。しかし、その根拠は極めて薄弱です

調査報告がいう「再発防止」は、@掘削土砂を分離・沈降させない、閉塞させない措置、Aこれによって過剰な土砂取り込みを生じさせない、B万が一、閉塞が生じた場合に切羽を緩めない対応をする―ということで、言い換えれば「これまでは注意してこなかったので、今後気をつけてやります」と言うだけです。この姿勢は、沿線住民への対応でも同じです。周辺監視を強め、できるだけ説明する、問い合わせには「適切な対応」をし、不安を取り除く、という「精神論」が繰り返されています。事業者はこれまでも、同じ事を言ってきています。言葉だけでは信用できません。
(了)


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